現在位置: ホーム 研究活動 5つの戦略課題 第4部会:エネルギー変換 サブ課題4:ナノ構造体材料における高効率非平衡エネルギー変換過程とナノ構造創製の理論シミュレーション

サブ課題4:ナノ構造体材料における高効率非平衡エネルギー変換過程とナノ構造創製の理論シミュレーション

作者: admin — 最終変更 2013年10月03日 01時23分

[担当者] 産総研:浅井美博、中村恒夫、大阪大:吉田博、佐藤和則

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[課題内容・背景・重要性] 半導体1次元井戸などの高い電子状態密度を利用した高効率熱電変換材料の研究が活発に繰り広げられている。最近はナノ接合における狭窄効果や異種界面における振動数ミスマッチを利用したフォノン伝導度の抑制を通じた高効率化が有効であると考えられており、シリコンワイヤーや有機分子・電極接合系などにも興味が拡がっている。また太陽電池の熱損失を極小化する目的で閉じ込め系が注目を集めているが、ここでも接合狭窄効果による多重励起状態の安定化とその光電変換への利用が課題になっている。この様に高効率エネルギー変換材料の実験研究においてはナノ構造体材料への期待が非常に高い。これらの研究では次元制御・ボトルネック制御による新規量子機能開拓やナノ構造の創製法の開拓が重要であるが、特に理論面ではエネルギー変換過程と散逸過程の拮抗に関する理解とナノ超構造の形成過程の理解を充分に深める必要がある。これ等の点まで踏み込んだ理論シミュレーションは現時点で皆無に等しい。当サブ課題ではモデルシミュレーション、第一原理シミュレーションを多階層的に駆使する研究を行うと同時に、まるごと第一原理シミュレーション行う事を目指した融合研究を行い、ナノ狭窄構造やナノ超構造を積極的に利用した高効率熱電変換材料や太陽電池とそれらの創製法の理論シミュレーションに基づく提案を行う。

fig4-7.png[計算手法] 非平衡エネルギー変換過程の計算は、電子相関効果、温度勾配、電磁場を含めKeldyshグリーン関数に基づくダイアグラム計算により導出した基本理論式に基づいて数値的に行う。当面モデル計算が先行するが、可能な限り第一原理化して行く。ナノ超構造の計算は、第一原理的に計算した相互作用の距離依存性をモデルに射影し、運動学的モンテカルロ法でナノ超構造の形成を予測し、これらのナノ超構造での電子状態や物性予測および量子機能のデザインを行う。

[次世代スパコンの必要性・実現可能性] 弱相関理論では自己エネルギー計算に畳み込み型実エネルギー積分が必要であるが、この部分が最も計算時間を要する部分である。物理プロセスが複雑になるにつれ、積分の為のDOループ量が増え、より多くの計算時間を要する様になる。並列計算機を用いる事により、この部分の計算が劇的に高速化でき、計算の質・量の向上が期待できる。次世代スパコンを用いる必要性は高い。

[具体的な成果目標] ナノ接合における狭窄効果によって高効率エネルギー変換が実現し得るかどうかを解明する事が、本サブ重点課題の一つの目標である。エネルギー変換過程と散逸過程の拮抗を真面目に取り扱う事により、物理的なリアリテイを担保しつつ、計算の第一原理化により化学的なリアリテイも追求する。もう一つの目標はナノ超構造をデザインし、その量子物性を統計力学的な手法で予測する事であり、具体的には、スピンエントロピー膨張やナノ超構造による超巨大ゼーベック係数の実現可能性とその物質構造特異性を明らかにし、創成過程を解明する事を目指している。