
英単語の「parallel」は、辞書を引くと「平行」「並行」「類似」など複数の訳が並んでいて、どれを使えばいいのか迷った経験がある方も多いのではないでしょうか。さらにIT分野では「並列処理」「parallelコマンド」といった技術用語としても頻繁に登場します。
同じ単語なのに、なぜこれほど多くの意味を持つのでしょうか。
実は、これらの意味はすべて「そばに並ぶ」という一つのコアイメージでつながっています。この記事では、英単語としての基本的な意味から、コンピュータ分野での並列処理での使われ方まで、一つの流れとして理解できるよう整理していきます。
この記事で学べること
- parallelの語源は「そばに並ぶ」で、全ての意味がここから派生している。
- 形容詞・名詞・動詞の3品詞で意味が変わり、使い分けが明確にできる。
- 「in parallel」は並行・同時・並列式の3つの用法を持つ副詞句。
- IT分野の並列処理は「複数の作業を同時に進める」という発想の延長線上にある。
- GNU parallelコマンドを使えば作業を分割して同時実行できる。
英単語parallelのコアイメージと語源
まず押さえておきたいのが、この単語の根っこにある考え方です。
「parallel」の語源は、ギリシャ語の「para(そば)」と「allelon(互い)」を組み合わせた言葉だとされています。つまり「互いにそばに並んでいる」という状態が原点です。
二本の線が同じ向きで、等しい間隔を保ちながら並んでいる。この視覚的なイメージを持っておくと、後で出てくる抽象的な意味も無理なく理解できます。
個人的に英語を教えてきた経験では、訳語を丸暗記するよりも、このコアイメージを一つ持っておく方が応用が利くと感じています。「平行」も「類似」も「並列処理」も、すべて「並んでいる」から派生していると考えれば、記憶の負担がぐっと減ります。
品詞ごとに変わるparallelの意味と使い方

「parallel」は形容詞・名詞・動詞のいずれとしても使われます。品詞によって意味が少しずつ変化するので、順番に見ていきましょう。
形容詞としての意味
形容詞の「parallel」には、大きく分けて二つの方向性があります。
一つは物理的な「平行な」「並行する」という意味です。線や面が同じ向きで並んでいる状態を表します。
The road is parallel to the river.(道路が川と平行している)
もう一つは比喩的な「対応する」「類似した」「同様な」という意味です。「similar(似ている)」に近いニュアンスで使われます。
そしてコンピュータ分野では「並列の」、つまり複数のデータを同時に処理・伝送するという意味でも用いられます。
名詞としての意味
名詞では、平行線や平行面といった物理的な「parallel」のほか、緯度圏(地図上の緯線)を指すこともあります。
抽象的な使い方では「類似点」「類例」「同等のもの」という意味になります。特に覚えておきたいのが「draw a parallel between A and B(AとBの類似点を指摘する)」という表現です。
動詞としての意味
動詞の「parallel」は「〜と平行する」のほか、「〜に似ている」「〜に匹敵する」という意味を持ちます。
The events of the last ten days in some ways parallel those of the 1930s.(最近の出来事は1930年代の出来事といくつかの点で似ている)
こうして並べてみると、どの品詞でも「並ぶ」「対応する」という核が一貫していることがわかります。
熟語in parallelの3つの用法

英作文や技術文書で頻出するのが「in parallel」という副詞句です。主に次の3つの意味で使われます。
〜に並行して
物理的・比喩的に並んで進む状態を表します。
〜と同時に
複数の物事が同時進行する様子を示します。
並列式に
電気回路やIT分野で用いられる技術的な意味です。
「in parallel with 〜(〜と並行して/〜と同時進行で)」という形で使われることが多く、コンピュータ分野では「processes running in parallel(並列に実行されるプロセス)」のように頻出します。
文法用語のparallel structure(並列構造)

英文法の世界には「parallel structure(並列構造)」または「parallelism(並列法)」という用語があります。
これは、文中で二つ以上の要素を列挙するとき、それらを同じ文法形式で並べるというルールです。名詞なら名詞、動詞なら動詞、動名詞なら動名詞というように、形をそろえて並べます。
たとえば「reading, writing, and listening」のように動名詞で統一すると、リズムが整って読みやすくなります。ここでも「そろえて並べる」というparallelのコアイメージが生きています。
コンピュータ分野でのparallelと並列処理
ここからがIT分野での使われ方です。英単語の意味を理解した今なら、技術用語もすんなり頭に入るはずです。
並列処理という考え方
「parallel processing(並列処理)」とは、複数の処理を同時に進めることで、全体の作業時間を短縮する技術です。
一人で10個の作業を順番にこなすより、10人で1個ずつ同時に片付けた方が早い。この直感的な発想が並列処理の本質です。まさに「そばに並んで同時に進む」というparallelのイメージそのものです。
大きな問題を小さく分けて同時に処理するという発想は、デカルトの「困難は分割せよ」という格言と分割統治法にも通じる考え方です。
並列処理の主な方式
並列処理にはいくつかの方式があります。代表的なものを比較してみましょう。
共有メモリ並列
- 複数の処理が同じメモリを共有する
- OpenMPなどで実装される
- プログラムが比較的書きやすい
クラスタ並列
- 複数のコンピュータで分担する
- 大規模な計算に向いている
- ネットワークで連携する必要がある
並列プログラミングでは「OpenMP」というしくみがよく使われます。ここでは「#pragma omp parallel」というディレクティブ(指示文)を書くことで、その部分を並列に実行するよう指定します。この「parallel」という単語が、まさに「同時に並べて実行せよ」という命令になっているわけです。
GNU parallelコマンドの使い方
Linux/Unix環境では「GNU parallel」というコマンドがよく使われます。
これは、通常なら順番に実行するコマンドを、複数同時に実行してくれるツールです。たとえば大量のファイルを一つずつ変換する作業を、複数まとめて同時進行させることで、処理時間を大幅に短縮できます。
GNU parallelが役立つ場面
数値計算の分野では、こうした並列処理と高速フーリエ変換(FFT)のような効率的なアルゴリズムを組み合わせることで、さらに高速な処理が実現できます。
日本語訳のニュアンスの違い
「parallel」の訳語は文脈によって使い分ける必要があります。混同しやすいので整理しておきましょう。
同じ「parallel」でも、幾何学なら「平行」、作業なら「並行」、コンピュータなら「並列」と訳し分けるのが自然です。この使い分けを意識するだけで、翻訳の精度がぐっと上がります。
よくある質問
parallel toとparallel withの違いは何ですか
どちらも「〜と平行して」という意味で使えます。厳密な違いは少なく、「to」の方がやや一般的です。「in parallel with」の形になると「〜と同時進行で」という意味合いが強まります。
並列処理と並行処理は同じものですか
厳密には異なります。並列処理(parallel)は複数の処理を物理的に同時実行することを指し、並行処理(concurrent)は見かけ上同時に進んでいるように見せる処理を含みます。日常会話では混同されがちですが、技術文書では区別が重要です。
parallelを動詞で使うのは自然ですか
はい、自然です。特にフォーマルな文章やニュースで「A parallels B(AはBに似ている・匹敵する)」という形がよく使われます。ただし日常会話では「be similar to」の方が一般的です。
GNU parallelを使うと必ず処理が速くなりますか
必ずしもそうとは限りません。CPUのコア数を超えて並列化しても効果は頭打ちになりますし、ファイルの読み書きが集中すると逆に遅くなる場合もあります。作業の性質を見極めて使うことが大切です。
parallel structureは英作文で必ず守るべきですか
守ることを強くおすすめします。並列構造がそろっていない文は、文法的に間違いと見なされることが多く、読み手にも違和感を与えます。列挙するときは形式をそろえる、と覚えておくとよいでしょう。
まとめ
「parallel」は「そばに並ぶ」というコアイメージから、平行・並行・類似・並列と幅広い意味に広がっている単語です。
英単語としての意味を理解しておくと、IT分野の並列処理という技術用語も、同じ発想の延長として自然に飲み込めます。訳語を暗記するのではなく、一つのイメージから枝分かれしていると捉えるのが、遠回りのようで一番の近道だと感じています。
まずは身近な英文や技術文書の中で「parallel」を見つけたとき、「これはどの意味だろう」と品詞と文脈を確認する習慣から始めてみてください。少しずつ、この多面的な単語との距離が縮まっていくはずです。
並列という言葉が実際の通信技術でどう生きるかを知りたい場合は、トンネリングと暗号化から見るVPNの仕組みが具体的な題材になります。