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次世代スパコン物性科学分野研究会「新物質とエネルギー」開催報告

作者: admin — 最終変更 2013年11月01日 19時21分
開催日時
平成22年3月10日(水)13:00~18:30 (19:00~懇親会)、11日(木)10:00~16:20
場所
東京国際フォーラムガラス棟 7階701号会議室/7階ラウンジ
主催
次世代ナノ統合シミュレーションソフトウェアの研究開発 情報機能・材料グループ
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責任者
東京大学 大学院理学系研究科 常行真司
出席者
104名

概要

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この研究会は、次世代ナノ統合プロジェクトのなかの、物性科学研究グループの活動の一環として開催された。先鋭的なフォルムの東京国際フォーラムガラス棟を会場とし、2日間で104名の参加者により、活発な議論が交わされた。研究会のテーマは「新物質とエネルギー」であり、物性科学分野における大規模並列計算手法と、その手法を活用した研究に関連した20件の講演と、41件のポスターセッションが行われた。また、ナノテクや素粒子の最先端研究、シミュレーション可視化技術関連で4人の第一人者による招待講演があり、分野や領域を超えた議論が成された。初日夜には懇親会が開催され、ひざを交えた議論に花を咲かせた。

報告

2010年3月10日(木)

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開催初日、明るい日差しがさす開放的な廊下を抜けて参加者が集まり、13:00に会議はスタートした。本研究会は、3つのセッショで合計20件の講演、41件のポスターセッション、4件の招待講演から構成された。全プログラムを次の3章に示す。

初日はじめのセッション1の「次世代ナノ複合材料」では、9件の講演が行われた。このセッションでは、第一原理計算をベースとした超並列計算向けの計算手法、および、その手法を用いた材料の機能発現予測等に関する研究報告がなされた。超並列計算により原子数を増やしたシミュレーションを行う際の計算手法の工夫が、今後の材料機能予測の鍵となることが伺えた。

次に、この日1件目の招待講演として、NEC曽根様より、エネルギー、環境問題とかかわるナノテク最前線のお話があり、課題を解決するために計算科学の貢献が大きく期待されているとの話があった。特に省エネデバイスや電池関連と計算科学の連携の重要性を訴えられた。2件目の招待講演として、物性研小森先生より、STMによる観察と計算科学の連携研究が紹介された。計測と理論両面からの現象解明を同時に行うことにより速く理解が深まるため、応用研究の競争力が強化されると感じられた。

招待講演後に行われたポスターセッションは、会議室の隣に位置するガラスの壁で囲まれた、ラウンジで開催された。若手研究者を中心とした41件の成果発表が行われ、講演と関連した計算手法の詳細検討や、先端的な研究の結果が報告された。ポスターセッションは、講演後の質問時間を補完するという作用も有していた。

ポスター会場からの景色が銀座の夜景に変わった18:30に会議は終了し、参加者は懇親会会場「香港ダイニング 九龍 銀座店」に向かった。19:00からスタートした36名参加の懇親会は着席でスタートした。3時間飲み放題、食べ放題で、100品近いメニューから1品よりオーダーできて5,000円という、銀座ではあまり考えられない設定も功を奏し、後半、席は入り乱れて盛り上がった。春風の宴は22:00にお開きとなった。

2010年3月11日(金)

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2日目も天井からの日差しが参加者を迎えた。午前中は、セッション2「次世代ナノ電子材料」として、6件の講演が行われた。これまで困難であった物理のダイナミクスの問題を解くため、超並列密度行列組み込み群法等が紹介され、事例研究結果も紹介された。大規模計算機による時間変化を含めた現象解明は、今後、実験と計算を強く結び付けていくであろう。

2日目最初の招待講演として、高エネ研の橋本先生より、素粒子の基本理論と物性物理の関連性の話しがあった。計算物性科学は素粒子や宇宙分野と共通項が多く、連携による効果が高いことが示された。2件目の招待講演として、新分野創成センターの武田先生より、国立天文台での宇宙の可視化技術に関する紹介があった。パブリックアウトリーチとして非常に優れたプレゼン手法であり、聴衆はしばし研究会を忘れて宇宙の世界に浸った。物性分野も、インパクトのあるアピールをしていかなければならないと感じさせる講演であった。

最後のセッション3では「次世代ナノ磁性材料」として5件の講演があった。モンテカルロ法と分子軌道法等の複数の計算手法を組み合わせることで、これまで収束が困難であったマルチフィジクス等の課題に取り組むという例が紹介された。この分野の計算手法は、超並列計算が非常に有効的に機能すると考えられるため、次世代スパコンによるブレークスルーが期待される。

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