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重点課題2:水素・メタンハイドレートの生成、融解機構と熱力学的安定性

作者: admin — 最終変更 2013年10月03日 01時15分

[担当者] 岡山大:田中秀樹、甲賀研一郎、東北大:水関博志、金沢大:三浦伸一

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[課題内容・背景・重要性] メタンハイドレートは石油や石炭などの他の化石燃料に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量がおよそ半分であり埋蔵量が2倍以上と期待され、しかも日本近海に世界有数の埋蔵量を誇る地域がある。しかしメタンハイドレートを低コストでかつ大量に採取する方法については様々な検討がされているものの技術的な課題が多く、基礎物性の正確な予測が社会から強く要請されている。また来るべき脱炭素化社会におけるエネルギー源としての水素の安全で安価な貯蔵法として水素ハイドレートが利用できる可能性があり、その実用化に向けた検討を行う必要がある。大型実験施設J-PARCでの中性子実験からもハイドレートの基礎物性を探る動きがあり、実験・シミュレーション両面から研究できる体制になりつつある。

[計算手法] メタンハイドレートに関しては特に、サブミリ秒というこれまでに類のない長時間のMDシミュレーションを行い、律速過程を含めた融解と結晶成長の全貌を明らかにする。水素ハイドレートに関しては、固溶体モデル等を用い、自由エネルギー計算に基づく熱力学的安定性の評価により、相図の作成やクラスレート安定化プロモーター分子の分子種と組成の包括的な探索を実施する。

[次世代スパコンの必要性・実現可能性] 数百万の水分子に接するメタン-エタンの混合ガスについて、サブミリ秒にわたるシミュレーションを行う予定であるが、この規模の計算に関しては、これまでのプロジェクトで開発されてきた高度に並列化されたプログラムmodylasと自作のプログラムを組み合わせることにより実施することができる。水素ハイドレートに関する自由エネルギー計算については、自作のプログラムにより行う予定であるが、このための基本的な方法の一部を我々は確立している。また第2部会、第3部会でも自由エネルギー計算の手法開発がおこなわれており、これらを広い温度圧力組成範囲に適用することにより、実用化の可能性を探ることができると期待される。

[具体的な成果目標] メタンハイドレートの効率的な採取方法など、その有効利用を実現するためには特に生成解離過程や熱力学的安定性を明らかにする必要がある。そのために、実在の境界条件下において熱と物質の移動を取り入れたシミュレーションを行い、相転移過程の熱力学的な側面だけでなく動力学的な側面を含めて明らかにし、メタンハイドレートの制御可能性に関する科学的知見を確立する。同様の手法で水素ハイドレートに関しても効率的な生成解離過程や安定性を明らかにすることにより、水素の安全で安価な貯蔵法としてのハイドレート利用の可能性を探る。