現在位置: ホーム 研究活動 5つの戦略課題 第4部会:エネルギー変換 サブ課題3:高性能リチウムイオン電池の開発に向けた基礎的研究

サブ課題3:高性能リチウムイオン電池の開発に向けた基礎的研究

作者: admin — 最終変更 2013年10月03日 01時21分

[担当者] 産総研:大谷実、東京大:山下晃一、日産自動車:大脇創、名古屋大:長岡正隆、 大阪府大:麻田俊雄

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[課題内容・背景・重要性] リチウムイオン二次電池の喫緊の課題は高容量化と安全性向上であり、特に電動自動車や太陽光発電バックアップといった大規模用途において重要となる。正極・負極に課せられた要求レベルは極めて高く、従来型の材料探索の他に、計算機シミュレーションを用いた高精度な物性理解に基づいた材料探索が必要であろうと考えられている。リチウムイオン二次電池の動作環境下における現象を扱うためには、有機溶媒中の物質移動や界面における化学反応等を扱う手法が不可欠である。そのために、固体表面から電解質領域にシームレスに接続する空間的なマルチスケール手法、分子量の大きな有機溶媒中の物質移動を扱う分子動力学手法の開発も併せて行う。

[計算手法] 主として密度汎関数法に基づく第一原理電子状態計算手法。補助的に古典分子動力学法や溶液理論を用いる。

[次世代スパコンの必要性・実現可能性] 金属である電極と絶縁体である溶液との界面を量子力学的に正確にシミュレートするためには、扱う系が必然的に大規模になり計算量が増大する。従って現有の計算機資源では正確なシミュレーションを行う事は困難である。大規模計算を行うためのオーダーN手法(O(N)法)と、電気化学系を扱うための有効遮蔽媒質法のハイブリッドに基づく電極-電解質界面モデルの第一原理分子動力学計算に関しては、既に手法を確立し多くの経験を有している。特にシリコン系負極-電解質界面での電気化学反応や溶媒和リチウムイオンの電解質におけるダイナミクスなど、小規模ながら計算に着手している。また、量子化学計算と分子力場を結合した QM/MM 法、多並行多並列計算手法にもとづく高速分子動力学シミュレーションと自由エネルギー勾配法が実現しており、凝集系の熱力学状態を特定する計算化学的手法は確立しつつある。 [具体的な成果目標] 第一原理分子動力学シミュレーションおよび量子化学計算に基づく一括時空シミュレーションに基づいて、電極系や電解質の研究に適した計算モデルを確立し、計算効率・並列性の高いO(N)法あるいはO(N2)法を取り入れた分子動力学シミュレーションを行う。これによって、電解質中のリチウムイオン拡散、電極付近における溶媒和したリチウムイオンの脱溶媒和、また初期充放電過程で生成される表面皮膜の生成機構を明らかにする。これらを通じて、電極-電解質界面における電気化学反応を伴う物質移動を扱う方法論を構築し、電池特性の最適化に向けた実効的理論的指針を提案する。