現在位置: ホーム 研究活動 5つの戦略課題 第2部会:次世代先端デバイス科学 サブ課題2:ナノ構造体における光誘起電子ダイナミクスと光・電子機能性量子デバイスの開発

サブ課題2:ナノ構造体における光誘起電子ダイナミクスと光・電子機能性量子デバイスの開発

作者: admin — 最終変更 2013年10月03日 00時55分

[担当者]  分子研:信定克幸、筑波大:矢花一浩、東京理科大:渡辺一之

[課題内容・背景・重要性]  理論や計算手法の開発と計算機能力の飛躍的な向上のおかげで、次世代の量子デバイス候補となり得るナノ構造体の個々の物性の理解は格段に進んでいる。しかしその一方で、大容量、超高速、超極小、高効率、新規化学反応性等、次世代量子デバイスに課せられた要求レベルは非常に高く、個々の物性の理解と機能性量子デバイス開発の間には未だ大きな隔たりがあることも事実である。この溝を埋めるためには、機能性発現のメカニズムの解明を行い、任意の機能性を物質に付加する方法を見出す必要がある。我々は、ナノ構造体における機能性発現には光誘起電子ダイナミクスが極めて重要な鍵を握ると考える。本研究課題では、次世代スパコンを使ってナノ構造体における実時間光誘起電子ダイナミクスの第一原理計算を行い、ナノ構造体機能性発現のメカニズムを根源から理解するとともに、光エネルギー伝搬、超高速スイッチング、量子データ転送、光触媒作用等の光・電子機能を持つ量子デバイスを計算により提案し設計することを目指す。

[計算手法]  本研究課題では、時間依存Kohn-Sham(KS)方程式を実時間・実空間領域において差分法で解く手法を主として用いる。

[次世代スパコンの必要性・実現可能性] アルゴリズムが簡便であるために高並列化が期待できる。現状では、一辺1ナノメートル程度の立法体計算空間において、電子の運動により引き起こされる電場の再帰的な生成まで含めた光・電子ダイナミクスの数百コア程度のMPI並列化計算が可能である。また、一様な半導体中の100フェムト秒程度の光誘起電子ダイナミクス計算が、数百コアを用いたk点に対するMPI並列により可能となっている。

[具体的な成果目標] MPIによるプロセス並列とOpenMPによるスレッド並列を併用したハイブリッド並列を前提としたアルゴリズム開発を行う。これにより、これまでは実行不可能であった、ナノ構造体アレイにおける光エネルギー伝搬のメカニズム解明、数百から数千原子を含む非線形光学材料物質(擬1次元有機物質、金属ナノ構造)などの光電子ダイナミクスの解明、レーザー励起固体表面フェムト秒相関ダイナミクス(表面ナノ構造変形や電子放出)の解明が可能となる。シミュレーション法の質的な変革として、電子ダイナミクスに対し衝突効果を取り入れることにより、電子のバリスティックな運動から拡散運動までを統一的に記述することができるシミュレーション法を構築する。また、電子ダイナミクス(KS方程式)と電磁場ダイナミクス(マクスウェル方程式)を自己無撞着に解くための手法を開発し、サーフェスプラズモンポラリトンに代表される電磁場と電子系が結合した光・電子ダイナミクスの理解とその機能性デバイス開発への適用を行う。この手法は、表面レーザー励起後の励起子生成・緩和・発光過程の解明にも展開することが可能である。