現在位置: ホーム 研究活動 5つの戦略課題 第3部会:分子機能と物質変換 サブ課題1:拡張アンサンブル法による生体分子構造・機能の解明

サブ課題1:拡張アンサンブル法による生体分子構造・機能の解明

作者: admin — 最終変更 2013年10月03日 01時03分

[担当者] 名古屋大:岡本祐幸、分子研:奥村久士、原研:志賀基之、東北大:高橋英明

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[課題内容・背景・重要性] 生体分子の機能はその立体構造により決まっている。つまり、形が決まって初めて、その生体分子系の機能が原子分子の詳細を含めて議論できることになる。しかし、計算機能力の絶望的な不足により、これまで、構造予測は不可能とされ、おもに、X線回折実験やNMR実験により構造決定がされてきた。もし、計算機シミュレーションによる立体構造予測が可能になると、生体分子の構造形成の機構を解明できるばかりでなく、酵素反応の発現原理やイオンチャンネルの機能解明、医薬品の開発、間違った折り畳みに起因する病気の発現原理の解明など、その応用範囲は計り知れない。

[計算手法] シミュレーションがエネルギー極小状態に留まらない、拡張アンサンブル法という強力なシミュレーション手法を適用するとともに、より構造探索効率の高い新規拡張アンサンブル法を開発し、これを用いる。また、得られた構造に基づいて発現する化学的機能の解析には、環境を構成する分子の古典力場からの寄与を取り入れた量子化学計算(QM/MM)法を用い、さらにプロトン輸送など量子効果の高い現象に対しては、経路積分法により核を量子化した上で電子状態計算を行う。

fig3-5.png[次世代スパコンの必要性・実現可能性] プログラムとしては、次世代スパコン用に開発されたレプリカ交換法の付加機能ソフトウェア[REM]やその改良版を用いる。また、modylasを分子動力学計算に、また、同様に開発されたFMO/MP2を電子状態計算に使用する。上記のソフトウェアは、いずれも高い並列化効率を持つことが実証されている。次世代スパコンでの使用のために、並列数を数万から数10万のオーダーとすることが可能である。 [具体的な成果目標] これまで不可能と思われていた生体分子の第一原理からの立体構造予測を可能にすることを目指す。特に、大規模分子動力学シミュレーションにより、膜蛋白質や水溶性蛋白質の立体構造予測を対象とする。これにより、X線などの実験により構造決定を必要要件としないドラッグデザインや蛋白質の機能解析が可能となる。具体的には、アミノ酸数100程度の球状蛋白質数個(all α、 all β、 α/βなどの典型的な2次構造要素を持つもの)やアミノ酸数300余の膜蛋白質(例えば、バクテリオロドプシン)などの立体構造を予測する。さらに、このようにして得られた立体構造に基づいて、電子状態や核の量子効果も含めた精度の高い計算手法を適用することにより、酵素反応の本質やプロトンチャンネルをはじめとした生体内量子過程等を分子論的に解明する。