現在位置: ホーム 研究活動 5つの戦略課題 第3部会:分子機能と物質変換 サブ課題2:ポリモルフから生起する分子集団機能

サブ課題2:ポリモルフから生起する分子集団機能

作者: admin — 最終変更 2013年10月03日 01時04分

[担当者] 京都大:松林伸幸、産総研:篠田渉、東レ:茂本勇、姫路獨協大:吉井範行、東京大:野口博司、 東北大:川勝年洋、慶応大:泰岡顕治

[課題内容・背景・重要性]  界面活性剤や脂質、高分子のような多官能性の分子は、温度や塩・共溶媒濃度のような外部パラメータによって多様な自己組織化状態を示し(ポリモルフ)、ミセルや膜、そして液晶のようにナノあるいはメソスケールのソフトな構造体に自己組織化する。この構造に基づいて、系は分子の認識、分配、分離、輸送機能などの多様な機能を集団として発揮するが、これらは、生体模倣材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、海水淡水化、食品・コスメティックといった広範な社会的ニーズに直結し、応用範囲が極めて広い分子機能である。 本課題においては、熱ゆらぎ程度の強さの相互作用・相関によって生成されるソフトな自己組織化構造や分子集団としての機能を、単一分子の性質や分子間相互作用から計算科学的に予測する。その中で特に、マルチスケールの物理、化学に立脚して全原子レベルからメソレベルまでを連続的につなぐことにより、熱運動によりナノスケールの集団構造がダイナミックに変化するあるがままの姿をシミュレートし、解析することを目指す。

[計算手法]  大規模分子動力学計算にはmodylasを用いる。本課題では自由エネルギー解析が問題解決の鍵を握るが、そのために、高速自由エネルギー計算ソフト[ermod]を用いる。さらには、粗視化、メソスケールシミュレーションソフト[MPDyn]などをも使用する。nmからμmの空間スケールとナノ秒からマイクロ秒の時間スケールを連続的につなぐために、全原子/粗視化/メソによるアプローチの統合連携手法を開発し、これを用いる。

[次世代スパコンの必要性・実現可能性] 全原子および粗視化シミュレーションの両者は、共に、高い並列化効率を持つことが実証されている。数十万から数千万粒子系を対象とする場合には特に次世代スパコンが不可欠となるが、そのための高度化・チューニング等は順調に進捗している。

[具体的な成果目標] ミセル、脂質膜、高分子分離膜を対象として、物質(ドラッグ)分配、分離と輸送を解析、制御、予測するシミュレーション手法を開発する。その中でも特に、多官能性、両親媒性分子の持つ多様な相挙動の理解と予測のために粗視化モデルを開発し、nmからμmにわたる多様な階層的構造の探索の基盤とする。これにより、高性能な界面活性剤や脂質、液晶、高分子の開発に資するとともに、ドラッグ、キャリヤ、媒質(水や塩)のインタープレイによって決定されるDDSの構築指針を全原子レベルで開拓する。たとえば、メソスケールシミュレーション手法に基づいて流れ場中(血流など)でのキャリヤの運動を解析し、DDSにおいてより長距離なドラッグ運搬効率の向上を目指す。

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