5つの戦略課題
第1課題:新量子相・新物質の基礎科学
近年、鉄や銅の酸化物による高温超伝導体(電気抵抗がゼロになる物質)、トポロジカル絶縁体(表面のみが強固な金属となる絶縁体)、フラーレンに代表されるナノ炭素材料など、新奇な性質をもつ物質が発見されています。物質科学の源流におけるこれら新物質の機構解明に取り組むとともに、より高精度な計算手法(モンテカルロ法、MP2-F12法など)の改良・整備に努めています。 重点課題1:相関の強い量子系の新量子相探求とダイナミックスの解明重点課題2:電子状態・動力学・熱揺らぎの融和と分子理論の新展開 |
第2課題:次世代先端デバイス科学
今日の電子機器の性能を左右する半導体の細線技術はほぼ限界に来ています。次世代の技術として注目されている光デバイス(電気信号の代わりに光を用いた部品)やシリコンナノワイヤ(シリコンでできた直径が数ナノメートルの細線)の実用化をめざし、挙動の解明を行います。 重点課題1:密度汎関数法によるナノ構造の電子機能予測に関する研究特別支援課題1:ナノ構造の電子状態から機械的性質までのマルチスケールシミュレーション 特別支援課題2:ナノ構造体における光誘起電子ダイナミクスと光・電子機能性量子デバイスの開発 特別支援課題3:スピントロニクス/マルチフェロイックスの応用へ指向した材料探索 特別支援課題4:新材料探索 |
第3課題:分子機能と物質変換
生体分子を物質としてとらえ、ウイルスの増殖、感染、免疫の機構を分子レベルで解き明かします。これらの知見をもとに、ウイルスを構成するタンパク質と薬剤候補となる物質とのドッキングシミュレーションを通じて、創薬に役立てます。 重点課題1:全原子シミュレーションによるウイルスの分子科学の展開特別支援課題1:拡張アンサンブル法による生体分子構造・機能の解明 特別支援課題2:ポリモルフから生起する分子集団機能 特別支援課題3:ナノ・生体系の反応制御と化学反応ダイナミクス 特別支援課題4:機能性分子設計-光機能分子と非線形外場応答分子の光物性 |
第4課題:エネルギー変換
電気自動車等に利用される燃料電池やリチウムイオン電池の大容量化、高寿命化を実現する材料を探索するには、電極の化学反応の理解が不可欠です。また、エコなエネルギー源として注目されているメタンハイドレート(メタンが水分子に取り囲まれた化合物)から効率的にメタンを取り出すには、メタンハイドレートの生成・融解過程を明らかにする必要があります。これらの化学反応過程を計算機シミュレーションにより解明しようと試みています。 重点課題1:燃料電池関連物質における基礎過程の大規模計算による研究重点課題2:水素・メタンハイドレートの生成、融解機構と熱力学的安定性 特別支援課題1:太陽電池における光電変換の基礎過程の研究と変換効率最適化・長寿命化にむけた大規模数値計算 特別支援課題2:バイオマス利用のための酵素反応解析 特別支援課題3:高性能リチウムイオン電池の開発に向けた基礎的研究 特別支援課題4:ナノ構造体材料における高効率非平衡エネルギー変換過程とナノ構造創製の理論シミュレーション |
第5課題:マルチスケール材料科学
鉄鋼材料を強靱化するためには、ミクロスケールにおける電子・原子の挙動のみならず、メソスケールにおける内部組織の知見が不可欠です。また、凝固過程での組織形成が製品のマクロな性質に影響を与えるために、結晶成長の制御も不可欠です。さまざまなスケール域をスムーズに連結できるシミュレーションをめざしています。 重点課題1:金属系構造材料の高性能化のためのマルチスケール組織設計・評価手法の開発特別支援課題: 合金凝固組織の高精度制御を目指したデンドライト組織の大規模数値計算 特別支援課題: 超高速分子動力学計算による強誘電体薄膜キャパシタの高性能化 特別支援課題: ナノクラスターから結晶までの機能性材料の全電子スペクトルとダイナミクス |